南方は殴られた衝撃で目がチカチカしている。
すると目の前に男が現れた。
頭がくらくらしてよく分からないが、どうやらこの男に殴られたらしい。
男は笑いながら南方を蹴りとばした。
グッとうめき声を上げて南方が吹っ飛ぶ。
仰向けになった南方を容赦なく踏みつける。
そして手に握られているチケットを見つけ、奪おうとする。
だが南方は意識は薄れているものの、チケットを握る力だけはもの凄く強かった。
…放すものか!
絶対に!…
しかしそんな思いも虚しく男は電気銃をおもむろに取り出し、南方に向けて発砲した。
南方は泡を吹いて気を失った。
チケットは男の手に渡り、そしてミユキの手に渡った。
ミユキはコケにしたように南方を見下して鼻で笑った。
南方は遠ざかっていく二人を見つめていた。
体が痺れて動けず、ただ涙が溢れてきた。
…くそ…どうして…
どうして…俺はいつもいつも…女にだまされるんだ…
本当に悔しくてたまらなかった。
自分の女運のなさをこれまで呪ったことはあるだろうか。
ああ…遠ざかっていく
ふと山下の顔が浮かぶ。…南方は自然に声を張り上げて立っていた。
「おい!!チケット返せよ!」
足の震えはおさまっていた。