運命の輪12

最上  2006-11-27投稿
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橙色の優しい灯りが優ともう一人の体を温もりで包んでいる。その遠慮したくなるまでの暖かさに優は自然と目を覚ました。
「あれ…あんた、俺を助けてくれた…」
男の顔は踊りはぜる火の影に隠れてよく見えない。だがなぜか懐かしい。
「よく眠っていたな」
「そうだったんだ…あ、さっきは助かった。その…ありがとな」
どこかぎこちない会話。優はなぜだかわからなかったがこの男に申し訳ないわだかまりがあった。心の片隅に。
「どこかであったことあるかな?」
いつのまにか聞いていた。別に聞きたいという衝動があったわけではない。まるで本能のように優の口はことばを紡ぎだしていた。
男は無言で振り向く−はぜる薪の音が険しさを増す。「…!!」
優は言語の泉が枯れたかのようにことばを発することができなかった。
火中の薪は静かに辺りを暖めている。それに似付かわしい静寂は長かった。
優にとってはさらに。今まで会えなかった長い月日のように−



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