運命の輪13

最上  2006-11-27投稿
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ようやく優の口にことばが戻ったのは最後の薪が燃え尽き、炎がそれまで燃やしていた薪の中に宿った時だった。
「…え、嘘だろ?だってお前、お前…」
それ以上言葉にならない。前がよく見えなくなる。おかしいと思い目を擦ってみる−何も変わらない。網膜に映された真実は揺らぐことは決してない。
優は今、今まで生きた17年のうちの10年間をみている。優自分自身と、そして今まで片時も忘れることのなかった友を。固い友情で結ばれ、共に同じ未来を目指し、されど一方は叶えることができなかった者を。
では今目の前に存在する者は何者か。
幼き少年の心に深い爪痕を残していった死という人間の運命。早すぎた運命。それ故に−同胞が最後の安住の地に眠りについた故に一度は諦めかけた、共に誓った未来を、その約束を、優はみていた。
「なんなんだよ…なんでいきなり出てくんだよ…なんとか言ってくれよ!」
「……」
男の口は動かない。しかし目は地を見続けている。
「俺があの時どれだけの思いをしたかわかんのかよ!?なぁ…お前が急にいなくなって、俺どうしていいかわかんなくなって、俺は…俺は…!!」
10年間溜め続けてきた想いがそのせき止める役目を終えたように溢れだす。優は考えられなかった。ただ口だけが先に動いていた。
「お前が死んだ日、俺のなかでもなにかが死んだ。一緒に約束したよな…二人でこの村を救おうって、二人で平和な解決を見付けようって!戦な…」
「戦なんてやめさせようって」
突然男が優をさえぎった。地を見つめたまま。
「忘れてない。俺もお前と同じだ」
「嘘だ!お前の顔にはもう昔みたいな優しさなんて、これっぽっちものこってないじゃないか!」
優の頬を雫がつたう。全て出し切ったのだろう。落ち着きが戻ってきはじめた。
「話せよ…雅流」

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