すべてを飲み込むような濃霧に包み込まれた村。倉屋村
およそ22家族から構成されており、人口は約120人。
1家族あたりの構成人数は5人といったところである。
全国でも珍い村全体が半自給自足であると言うのだ。
半月に1回何10キロも離れた町から食料品や日用品が送られてくる。
マコトは信じられないと言ったような顔をしている。
それも無理もないことだった。
町ではモノクロテレビジョンなるものが登場し、世間を騒がせているのにこの村はどうだろう?
まるで大昔さながらの生活をしているではないか。
村人たちはみな似たような薄汚れた服装をしている。
だれもマコトには話しかけてこずに、こちらをじっと凝視している。
その目には何とも言えない部外者への敵対心がこもっていた。
タカシは祖母となにやらひそひそ話をしている。
私は自分だけがその世界にいないような孤独感に襲われた。
タカシの車には村人たちが興味津々に群がり、べたべた触っていた。
数分後タカシが興奮したようにこっちへ来た。
どうやらこの村で何らかの事件があったらしい。
私は少し胸が苦しくなった。
続く