運命の輪13

最上  2006-11-27投稿
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雅流と呼ばれた青年は黙って足元を見つめていた。見方によれば何か考え事をしていたとか、世にも珍しい生物を凝視していたとか、様々な形容の仕方があっただろう。だが男の表情には何もなかった。何の感情ももたないような、凍り付いた表情をしていた。まるで心を持たない人形のような。
ふいに雅流は視線を上げ、優の目をみる。
「話すよ。10年前なにがあったのか」
雅流は淡々と、流れ作業をこなすように語りだした。再び目を地に伏せて−
「あの日、俺はお前と別れた後に一人の男と会った。その人は背が高くて、片眼鏡をしていた。俺はその人を最初見たときは変な人だと思った。でも、なぜか興味があって、ちょっとだけ話に付き合うことにした。その人は村の神父だったみたいで、神様について話してくれた。俺は神父様の話を聞いて、自分も神様の力を少しでも分けてもらえたら平和を取り戻せるんじゃないかって思った。そして、神父様についていこうと思った。」
雅流は地を凝視している。いったいそこに何があるかはわからない。しかし優は他の異変にも気付いていた。
こいつ…感性を失ったのだろうか。喋る言葉が全部ただ意味を為す文字の羅列じゃないか…
「その後、両親が他界したからその神父に…」
「そう。神父様を悪くいわないでくれ。あの人は俺の育ての親なんだ」
そして優にはもう一つ気になっていたことがあった。それは−
「どうしてあの時俺を助けてくれたんだ?」

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