二人でいて、こんな苦しい時間は初めてだった。
「仕事、辞めようかと思ってます」
何か話さないと、苛立ちもモヤモヤした思いも全部あの人にぶつけてしまいそうだった。
あの人は、黙っていた。
花火も、今までのあの人との時間も台無しにしてしまった様で、助けて欲しいと言った自分に後悔した。
「ごめんね…。」
あの人は淋しそうな横顔で、花火のあと始末をしながら言った。
「二人で夏休み合わせて、どこか行きましょう。」
「えっ?」
あの人は、ビックリして僕の顔を見た。
「彼女が海外旅行に行く間、二人で過ごしましょう。」
「…。そんな、悪いよ」あの人は、また辛そうに顔を伏せた。
今はこの人との一瞬を大切にしたい。僕は開き直った。
「こうなったら、二人で、罪を背負いましょう」
「なんでやねん。」
あの人の切れのいい突っ込みが飛んだ。
僕らは、きっといつか離れる。
だから僕は、あの人を最後まで笑わせていく。
彼女の事以外で、この人にこんなつらい顔を二度とさせまいと誓った。