悪魔払い

御稲 糺  2006-11-29投稿
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ある晩のこと、いつもよりうれしそうなエヌ氏が、おお声をあげていた。
『ああ神よありがとう。』
なんでも、最近悪魔が部屋にいると悩んでいたのだ。
『この薬さえあれば…。』
と、毎日の帰宅してからのエヌ氏の疲れ切った顔などなく、むしろ口のゆるみを押さえられないほどだ。

実は、エヌ氏は薬学者で、かねてから研究していた薬が完成したらしい。
『はあ早く試したいな。』
そんな様子で部屋へ向かうとふいに呼び止められた。
『帰ったなら、まず…。』
その言葉に聞き飽きた様に
『やい悪魔め。今日の俺をなめるなよ。』
エヌ氏はすかさず薬を飲み込で、そう言った。
『お前さん今何を飲んだんだい。』
『これは今日完成した悪魔払いの薬だ。覚悟しろ。』
『何をまた馬鹿な事を言っているんだい。困った人なことだ、まったく。』
『ええい、黙れ黙れ。』

エヌ氏の手は強く相手の首を絞め付けて、悪魔払いをするんだという一心に目の色を変えていた。
『ちょっと、待って…。』
と、苦しくかすれた声にも今のエヌ氏には気がつかなかった。

そして気づいたらエヌ氏は警察の留置所にいた。
『落ち着いたかい。』
見張りにいた警察官と目が会い、話しかけられた。
『なんで、こんな所に。』
エヌ氏は呆然とした顔で、周りを見渡した。

『もうすぐ取り調べが始まるから、それまでじっとしてなさい。』
『はあ、でも何故…。』
『何があったかは、知らないが隣の家の人から通報があったらしい。』
『わたしは、何かしたんでしょうか。』
とぼけた顔のエヌ氏に対し、困った顔で警察官がこたえた。
『あなたは、自分の奥さんの首を絞めて殺したんですよ。』
『わ、わたしがですか。』
驚いた顔のエヌ氏にさらに驚いた顔で警察官が言った。
『あなたは何も覚えてないんですか。』

エヌ氏には、やっぱり思い出せないという表情に
『まあ、家庭でストレスがたまるのも無理ないですが、罪を犯した事は事実だから。』
警察官は、ぶっきらぼうに返した。

『そういえば、最初に駆け付けた僕の同僚から聞いたんだが、あなたを見たとき悪魔かと思ったと言っていたかな。』

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