先に砲撃を開始したのは地球軍だった。先手を打って主導権を握るつもりだろう。
戦況は一進一退の膠着状態でどちらも無駄に戦力を削っていった。
「強いな…」
俺はそんなことを呟いていた。
「艦長、一旦退いて態勢を整えるべきです」
「ここで退けば我々が殺られる…絶対に撤退をするわけにはいかん!!」
「了解しましたっ」
地球軍の一部は地球への退却を開始していた。宇宙は火星軍の庭だが地球は地球軍の庭だ。地球での戦闘を地球軍は想定していたのだ。
つまり、涙の海は火星軍をおびき寄せ撤退するための時間稼ぎだった…
この事実は地球軍月方面軍司令ワッチ中将ですら知らされていない事実であった。
「地球軍が撤退を開始しましたっ!」
「よしっ、追撃しろ、全滅させろ」
「はっ、本艦隊は追撃を開始する」
火星軍艦隊は涙の海になだれ込み一気に涙の海を制圧した。
月は地球軍から火星軍の勢力下となり宇宙から地球軍は姿を消した。
地球政府では講和を申し込む動きが水面下で拡がっていたが、軍部が強固に反対したために実現には至らなかった。
「地球は碧いですね」
「あぁ、火星とは正反対だな」
「我々が見た火星は紅かったですからね」
火星軍の兵士たちは初めて見る地球に感動していた。地球の碧さに…
続く