次の日、岩田さんからTELがあった。夕方5時半ごろで、私はまだ家に居なかった。学校から戻ったのは、6時半ごろで、そのあと折り返し連絡をした。親が番号を聞いてくれてあったのは幸いした。
だいたい、私どもの仕事には、勤務時間っていうのがあって、そんなに早く家にいる訳ないっての。
「あ、曽根さん?学校に行ってたんだ。えらいね。」
岩田さんはそう言ってきた。そうか、私は休んでると思ったのか。
「この前…昨日か、休んじゃったもんで、当日の集合場所とか、連絡しなきゃと思って電話したんだけど…。」
そうだ。私は、昨日練習に出ていない。当日のタイムスケジュールを昨日、プリントか何かで配ったのだろう。
「あ、プリントか何かあります?」
「うん。ほしい?…よね。FAXある?」
「あ…うちにはないですが、学校のFAXに送ってください。番号言います。」
「うん、ちょっと待って。」
プリントがあるなら、そのプリントをもらった方が早い。しかし、当日の服装だけは聞いておいた。
「じゃあ、そういうことで。明日送りますので。…本番よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
「体だけは気をつけてよ。」
うーん、念を押されてしまうような情けない体。ベルが伝わったのか、岩田さんは、私が昨日病気で休んでしまったことを知っていたのだ。
体は治さないと…。でも今週も忙しい。金曜日はスポーツテスト。土曜日までしっかり学校があり、日曜日はもう本番だ。休んでいる暇はない。
次の日、約束通り、FAXが送られてきた。私はそれを通読し、また曲の演奏順を確認した。譜面を見ながら、ひたすらイメージトレーニング。仕事の疲れでめまいがする。それでも、本番に間に合わせなければ…。〈名もなき詩〉のXyllophone、ヤバイ。
ヤバイまま、10月6日(日)の本番を迎えてしまった。
〜第1部 終わり〜